地域のサイクルツーリズムを見渡す・考察する ─ 前編【サイクルモード2019】


サイクルツーリズム = 「サイクル」+「ツーリズム(旅・観光)

今回は、サイクルモード2019で自治体ブースが発信する各地域のサイクルツーリズムの取り組みについて紹介したい。

 

ざっくり概要

サイクルモード 2019

正式名称 ▶CYCLE MODE international
開催期間 ▶2019.11.2, 3, 4 (3日間)  千葉・幕張メッセ
来場数 ▶2万5660人(2018年データ)

観光カテゴリ(ジテンシャx旅フェア)  参加団体数 ▶ 37ブース

サイクルモード2019 自治体ブースの出展見取り図。via. 会場マップより

 

https://www.cyclemode.net/travel/

↑参加団体のブース詳細は上のリンクで一覧できます。たぶん開催年のたびに更新されるだろうけど。

 

サイクルモードの来場者数 推移

2004年に第1回を開催したサイクルモード。

来場者数では「2009年  3万7610人」が最多。
2009年をピークに来場者は年々減り、出展する自転車メーカーも大手メーカーが出てなかったり、「日本最大の自転車フェス」という謳い文句にも疑問を感じる声が散見される。(試乗車が激混みで乗れない→最初からストレスフル。そんなイベントにリピートして行きたいと思いますか?)

 

サイクルモード 来場者数 グラフオフィシャルサイト上での発表数値をグラフ化。

https://www.cyclemode.net/2013/exhibition/results/
↑このURLの西暦を任意の年にすれば、その年の開催実績がわかる。

 

サイクルモードの規模がゆるやかに縮小しているとしても、国内での自転車関連のコンテンツは然程影響を受けず、つまりサイクルモードの来場者数の推移はあまり指標にはならない、と思っている。

海外の ユーロバイク台北タイペイ国際自転車ショー の方が世界規模の潮流を感じ取りやすいし、自転車コンテンツの可能性を探究しているように思う。

だから自転車コンテンツそのものが オワコン というわけではなく、

サイクルモードの方向性と、

  • マーケットの潜在的なニーズがうまくマッチングできていない
  • 新しいマーケット創造のハンドリングが不十分

だと感じる。

裏付けあるデータがあればいいけど、自分が日々目にするコンテンツによる肌感覚なのであしからず。


会場模様。2020年のサイクルモードは開催しないけど、自転車ニーズの意識が変わったこのタイミングで、どういう方向性を打ち出せるのか興味ある。

 

サイクルツーリズム 推進の背景

サイクルツーリズムや自転車を活用した観光振興は、2010年代になってから注目されるようになった。

サイクルモードでは「ジテンシャ × 旅」のエリア名で、自転車を活用して地域振興を目指す自治体、観光団体、旅行代理店などが参加する。

サイクルモードは規模が苦戦しているけど、サイクルツーリズム関連の出展ブース数は、年々ヒートアップしている、と読んだことがある。

 

実際のところ、自転車を活用した観光需要が増えているのか信憑性があるデータは持ち合わせてないけど、

推測の域でなら、

  • スマートフォンの発達による個人レベルでのナビやガイドが手軽になったこと。
  • 地域の高齢化により地域産業の弱体化 → 観光客を呼び込むことで地域振興の流れ(地方創生というわかりやすいアジテーション)
  • ハコモノ建設より費用・導入が手軽。健康にも一助。なんかエコっぽい。

そんなとこが理由に考えられる。

 

サイクルツーリズムの強み・ポテンシャル

車や電車、飛行機での移動だと、「移動手段」と「目的地の利用」に区別させられるが、

自転車を通して観光すると、移動するプロセスからも地域・フィールドを通して価値を探究する可能性が加わる。

「地域の風土や自然をより体感・実感できる」
「しっかりとした濃い時間が自分に残る」

例えば、寝台列車マニアだと、目的地に着くことより移動手段の電車内の体験へ価値を置くように、

今まで楽しみがわからなかった体験に分かち合える〝愉しみ方〟を提示、提供できるようにすること、
分断されていた体験をコーディネート・パッケージングして提案、案内するコンダクター/コンシェルジュの役割があったほうがいい。

「パソコンを与えてあとは各自で楽しんで」ではなく、インターネットやメールの使い方などを教えてあげる、サイクルツーリズムが定着するかは今はそんな段階に思える。

 

 

各地域のサイクルツーリズムPR 一覧

サイクルモード 出展していた自治体パンフレットサイクルモード2019 出展ブースから集めたパンフ等。日本地図の配置で並べた。

サイクルモードの各自治体ブースでもらえたPRパンフレットを並べた。

こういう観光ガイドって、地元の人が作成しているので情報は確かだし、アクセスから観光スポットと横断的にまとめられているので重宝する。

「ネットで調べればいいや」って思うけど、実際ググると、なんか似たような上辺だけの情報サイトしか引っかからない。選別スクリーニングに一苦労。(グーグルさんの仕事は年々劣化)
だからご当地ガイドブックがひとつあると、ざっと見て大まかなイメージを掴んでそこからネットで詳しい情報を調べたほうが速い。現地やアンテナショップでしか配布していないので、サイクルモードに行ったのはこれが目当て。

 

上の写真は、都道府県別に分類してみたけど、正確には県内の一部自治体・地域が観光事業/企画として、サイクルツーリズムを押し出している。

これに関しては、今回出展していない地域でもサイクリングイベントを行っている自治体もあるので、県単位でまとまって出展すればいいのにと思う。例えば長野県だったら「北アルプス」「信越自然郷」「白馬村」と3つの異なるブースで出展していた。

静岡県も富士山、伊豆半島、浜名湖、天竜川、茶畑と魅力的なスポットが沢山あるので、小さなブースでアピールするのは難しいかもしれないけど、「まだ走ったことなくていい所ないかなぁ〜」と飢えているチャリダーたちに刺さるものを打ち出してほしい。

 

サイクルツーリズム 地域別紹介

ここからは各自治体のサイクルツーリズムの取組みを個別にピックアップ。独断&偏見。

しまなみ海道(広島・愛媛・瀬戸内周辺)

サイクルモードのマップで見るとわかるけど、一番規模が大きい。そして豪華。


CX-5をドーンと置いた。自転車xクルマ 2+4=6ホイールという画策。確かに目立つけど魅力を伝えているかといったら疑問。


しまなみ海道を中心にサイクリングカルチャーを発信する。


驚いたのがこのガイドブック。これが無料って資金の出処に政治力を感じた。

さすがしまなみ海道。国内でトップクラスにサイクリングを推進しているのは伊達じゃない。

マツダは広島県が創業&本拠地なので、出展にも一役噛んでいるのかな。「サイクルタクシー」というサービスがあるのは知らなかった。

 

しまなみ海道の根幹を成す島同士を結ぶ「西瀬戸自動車道」は2006年に全線開通。そこから周辺自治体や行政、民間企業の協力体制で自転車チャリンコフレンドリーな環境が整う。2014年にはサイクリストの〝聖 地〟サンクチュアリと称され、2019年には国土交通省が定める ナショナルルート にも選定。

「環境」×「行政」×「観光」×「利用者」 が好循環で回っている、実現させたロールモデル。

一方「サイクリング好きを公言するなら一度くらい走っておかないと」という強迫観念、圧力を勝手に感じている。

 

鹿児島

出展していた自治体は「サイクルシティ南さつま推進協議会」

“南さつま”というエリアが、具体的にどこで線引きされるのか、わからないのだけど、ざっくり鹿児島でOK?

千葉も「上総かずさ」「下総しもうさ」「安房あわ」など現地の人なら境界線がわかるけど、他の地域からしたら「?」となる。こういった俗称問題は全国津々浦々あるので、フロントに掲げるときは知らない層への配慮をお願いします。

 

さて、鹿児島。
「接客・対応が良かった」このポイントを紹介したい。

各ブースを回ったとき中の人には、

  • メッセまではどう来ましたか? 実際現地に行くにはどういうアクセスがいいですか?
  • 3日間で現地を楽しむならどういうプランがいいですか?
  • 実際にモデルコースを走って注意することはありますか?

上記3点を質問していた。

この質問で満足度の高い解答を得られたのが、鹿児島ブースの人だった。
「飛行機で鹿児島空港に午前中に着いて、この町まで移動して1泊。2日目はこの道を走って、3日目はココに行って帰る。」「このルートはコンビニ少ないですよ」「コンタクトレンズをしてると火山灰に気をつけたほうがいいですよ」など。

そう、こういう会話が楽しい。
ブース内に設置されたパネルや紹介パンフを見るだけなら、それってネットでも済む話だ。
現地の人が語る地元の魅力や心意気に、その場所へ訪れたいと火がつく。動かされる。

だけど、ブースごとによって、落差が激しいのが実情。
「詳しいことはこのパンフ読んでくださいね」「え〜と、ネットで調べるとわかります」とか。

なんでやる気のない人が配備されているのかは、大人の事情もあるのだろうけど、当事者や来場者、双方に不幸だろう。見栄えの良いプロモVを作って流してたって、雑多の中では埋もれてしまう。

実際に地元を走って〝良さを実感している・違う景色を見ている〟その波長は他人に呼びかける。刺激する。インフォメーションよりエモーション。

 

 

福岡


ブース内の中央テーブルに福岡マップを配置。


思わず「左上の茶畑ってどこですか」と尋ねた。「八女中央大茶園」という所らしい。

福岡のブースは、他と比較すると簡素。

他のブースでは、壁面パネルは各モデルコースの詳細で埋まっていて濃密。まぁ福岡の場合、「準備や予算がそんな取れなかった」のが内情のようにも思うけど、悪くない、むしろけっこう良いんじゃない、とも思ってる。

まず、中央テーブルのマップ。
中央テーブルに地元マップを持ってくると、来場者に説明してるとき、あとからブースを通る来場者も自然と説明が聞ける構図になる。コミュニケーションを重視するならこちらのスタイルがいい。
ほかのブースでは、大きくプリントした垂れ幕タイプを壁面に設置している所が多かった。壁面パネルだと「スタッフ1人 × 来場者1組」というマッチになるので、「話を聞きたいけど空いてる人がいないからいいや」と機会を逃すことになってしまう。

また壁面の写真も、点数が少ないのでピンポイントに興味を持ちやすかった。

他のブースだと、立派に抜かりなく壁面を情報で埋めているのだけど、実際に雑多な会場に行くと細かい情報を読んでいくのは気が向かない。だったら現地の雰囲気や空間・時間が伝わるように演出するのもひとつの手かなと思う。

シマノはグラベルの臨場感を出すため土を盛り付けたけど、肥料が含まれていたらしく異臭が漂う事態となった。記憶には刻まれた。

 

沖縄

以前記事にもしたけど、飛行機輪行で沖縄へ 走りに行きました。

前回の経験で沖縄本島のことはなんとなくわかったけど、周辺の離島にはどうやってアクセスしたらいいのか尋ねたり、沖縄トークしたい欲求に駆られていた。

スタッフの人も、沖縄の人が持ってるオーラを発してて「久米島なんてどうですか?走ったことあるけどいいですよ!」と妄想トリップ計画を楽しんでいた。

 

ちょいちょい不満ドコロ

プレゼント渋滞


滋賀県と言えば琵琶湖、ビワイチ。この写真右側は景品ゲットのため常に行列ができていた。通路にも侵食してた。

特定のブースで行われていたノベルティプレゼント。

「もらえる物ならもらっておこう」の人たちが集まり、ブース周辺は人で混雑するし、スタッフはそっちに付きっきりだし、ノベルティプレゼントってメリットがあるのか疑問に思った。

アンケートに答えて系もあったけど、解答する方もやっつけ感で解答している気がするし、質問項目もこのQ&Aで目指す方向の指針になるのか腑に落ちない。

確かにタオルとかトートバッグをもらえるのは何かと良いけど、それが地域に観光に来てくれる直接の動機になるかは望み薄い。やはりブース内の人と話して、促されるのではないだろうか。

 

千葉市 ─ 新競輪ドーム

建設中のNewケイリンドーム。画像は2020年12月に開催した〝Urban MTB Festival in 千葉公園〟で撮影したもの。

千葉市ではこれまでの競輪場を建て替えて、クリーンな感じの新競輪ドーム+多目的スポーツ施設を建設中。

地元枠ということで、「千葉市 – 競輪場」として出展してたけど、これがまぁやる気がなかった。写真はないけど。

ネットで載ってるコンセプト画像とちょろとしたイメージ模型がテーブルに置いてあるだけ。いや、もうちょいアピール頑張ってよ、と心の中で嘆いた。

 

新たに作っているバンクは国際規格の周長250M。日本国内では、伊豆ベロドロームと日本競輪選手養成所のJKA250の2つのみ。

都心に近いことをメリットに国際大会を誘致したり、競輪の新規ファンの獲得を目指す。2021年3月完成予定。→5月を目処に建設中。

 

競馬>競艇>オート&競輪
公営ギャンブルの嗜好者は上記のような順列になる。競輪人口は一番下。

以前ラジオで、「いろんなギャンブルにハマって、最後に行き着いたのが競輪。」というコメントを聴いてから何か人を魅了する要素があるのか、気になっている。

競馬、競艇、オートレースと比べると、人間の生身の割合が高い。「そこにリスペクトがあります」ってやつだろうか。

 

Rapha × B.B.Base

2019年の台風被害を受けた千葉県の支援で  Rapha と B.B.Base が作ったチャリティTシャツ。

これは、ほぼ全員が同じことを感じていると思うので代弁するけど、Raphaロゴだけにして、B.B.Baseのロゴはどっか目立たないとこにデザインしてほしかった。


公開処刑?と思ってしまうほど、デザインの差は歴然&瞭然。B.B.Baseの武骨なフォントは “Eurostile”

 

後編へつづく──

前編はここまで。

後編では、ロードやスピードではないサイクリングを提案する 季刊誌 “cycle” や生活に寄り添った身近な自転車チャリンコライフの視点で、サイクルツーリズムを考えていければとおもいます。

こちら後編です↓

地域のサイクルツーリズムを見渡す・考察する ─ 後編

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